一夫多妻

 イスラームでは、男性が1人の女性と結婚し、愛情と親愛にあふれた家族を形成することが基本です。しかしイスラームは、それ以前の他の天啓宗教と同様、そこに含まれる英知と個人と社会にもたらされる福利ゆえに、一夫多妻も合法としました。そして同時に、そのことがいかなる規律や制約もないままにはせず、女性への害や不正を禁じ、その諸権利を保護する規律や条件を設けたのです。それは、以下のようなものです:

  1. 公平さ:

扶養や夜を共に過ごすことなど、表面的・物質的な物事において、妻は公平に扱われなければなりません。そして妻たちを公平に扱えない者は、一夫多妻を禁じられます。アッラーは、こう仰せられました。『それで、もし(複数の妻を)公正に扱えないことを恐れるなら、1人だけにせよ。』(クルアーン4:3)そして妻たちを公平に扱えない者の一夫多妻は、最も醜悪な罪の1つとなるのです。預言者rは、こう仰りました。「2人の妻があり、その一方だけを贔屓する者は、審判の日に半身が崩れ落ちた姿で現れる。」(アブー・ダーウード2133)

ただし愛情における公正さは、義務ではありません。というのもそれは、彼の力の及ぶところではないからです。次のアッラーの御言葉は、このことを指しています。『また、あなた方は決して、妻たちを公平に扱うことが出来ない。たとえ、そうしようと躍起になっても、である。』(クルアーン4:129)

 

  1. 妻たちを扶養する能力:

夫は、全ての妻を扶養する力がなくてはなりません。なぜならそれは1番目の妻と結婚する1条件であり、2番目の妻との結婚においては、尚更求められることだからです。

  1. 妻の数が4人以下であること:

 この数が、イスラームにおける最大限度です。アッラーは、こう仰せられました。『ゆえに、あなた方の気に入る女性と、2人でも、3人でも、4人でも、結婚するがよい。それで、もし(複数の妻を)公正に扱えないことを恐れるなら、1人だけにせよ。』(クルアーン4:3)そして改宗した時点で5人以上の妻がある者は、彼女たちから4人を選び、残りは離婚しなければなりません。

  1. 近親関係の悪化を考慮し、ある種の女性と同時に結婚することは禁じられます。それは、以下の通りです:
  • ある女性とその姉妹を、同時に妻とすること。
  • ある女性とその母方の伯(叔)母を、同時に妻とすること。
  • ある女性とその父方の伯(叔)母を、同時に妻とすること。

離婚

イスラームは、夫婦の間を死が分けるその時まで、結婚の契約が永続的となり、夫婦間の関係がしっかりと継続することを励ましています。アッラーは結婚を、「厳かなる契約」と名付けられました。イスラームでは、結婚が終了する時期を定めるなどという行為は、許されていません。

こうしたことを励行するイスラームではありますが、それが地上に住み、人間としての特徴や資質を備えた人々に定められたということにも、配慮しています。ゆえにイスラームは、共生が不可能となり、道が閉じかかり、改善の手段が失敗に終わった時には、彼らに結婚の契約を解消する方法も定めているのです。またイスラームは離婚において、男女両方に対する現実性と公正さによって、対応します。というのも、夫婦間に起こる様々な原因・不和・問題の多くは、離婚を不可避なものとし、両者にとっての善の達成と家族・社会の安定に必要な手段となるからです。そのような場合、結婚はその目的を果たすことが出来なくなり、夫婦が共にい続けることよりも、その離別の害悪の方がより小さくなるのです。

このような状況から抜け出す手段として、そして最初の相手にはないものを持っている相手を見つけるために、離婚は合法化されました。こうしてアッラーの次の御言葉が、実現することになります。『そして2人が別れれば、アッラーはその豊かさによって、いずれの者も満たして下さろう。アッラーは広大なお方、英明なお方である。』(クルアーン4:130)

しかし離婚には、それを規律づける多くの規定と規則が設けられています。それを以下に挙げてみましょう:

  • 離婚は妻ではなく、夫の手に委ねられているというのが基本形です。
  • 妻は、彼女が夫と生活するのが無理であるにも関わらず、夫の方では離婚を望まないという場合、裁判官に離婚を求めることが出来ます。そして裁判官は、その理由が満足のいくものであれば、彼女を夫から離婚させることが出来ます。
  • 離婚が2回目であれば、夫はその妻を復縁することが出来ます。しかし同じ妻を3回離婚してしまったら、彼女が別の男性と完全な結婚をし、かつ彼に離婚されない限り、彼女と結婚することは出来ません。また、妻が月経ではない清浄な状態にあり、かつ性交をしていない時に離婚するのが、イスラーム法にった離婚です。